2024年5月26日、7月のNRDAアジア・社会福祉法人恩賜財団東京都同胞援護会双葉園・あかばね塾合同キャンプ打ち合わせを兼ねて渥美半島の海岸線調査に参加して来ました。
この春長崎県野母崎沖でのカンムリウミスズメ洋上調査に同乗してくれた小学生も一緒です。目的は自然資源損害評価 ( Natural Resource Damage Assessment : 以降NRDA )の主要な手法である漂着鳥調査を小学生と一緒に楽しむことです。13年ぶりに参加した東三河野鳥同好会主催の調査は、過去の交友を再確認し、新たな視点からの観察を行う貴重な機会となりました。新しい出会いもあり、楽しい一日でした。
調査概要と参加メンバー
参加者はNRDAアジア代表植松、NRDAアジアボランティアメンバーI親子(小学6年生)、「あかばね塾」&「東三河野鳥同好会」メンバー約15名(豊川市の小学5年生1名含む)です。
あかばね塾は、ウミガメの生態調査や保護活動に力を入れており[1][2]、その活動の様子を紹介した動画も公開されています[3]。
[1] [PDF] 「あかばね塾」 - 田原市
[2] あかばね塾 - どすごいネット
(2007年の赤羽西海岸海岸での漂着鳥調査:通称太平洋ロングビーチ)
調査方法と使用したツール
海岸線を歩きながら漂着鳥を目視で確認し、デジタルカメラとGPSで記録を取りました。データシートに種類や状態を記入し、後の分析に備えました。
2009年から2022年までの調査結果
あかばね塾と東三河野鳥同好会の過去の調査では、2010年、2013年、2016年にハシボソミズナギドリの大量漂着が確認されましたが、2020年以降は減少しています。漂着したハシボソミズナギドリはほとんどが幼鳥で、新鮮な個体から白骨化した個体まで様々な状態でした。大量漂着が見られなくなった理由として、雛期の良好な餌環境による生育の良さや、黒潮の大蛇行による飛翔ルートの変化が考えられている。[5]
2024年5月26日の調査結果
ハシボソミズナギドリ、カワウ、エイが漂着していました。特にハシボソミズナギドリは2羽が確認され、その状態はやや新鮮なものとほとんど骨と羽毛のものでした。
小学生たちは積極的に調査に参加し、長い海岸線を疲れも見せず、好奇心の塊となって一気に歩き通しました。鳥以外にも、植物、貝殻、ウミウシの死骸やカメの手などを見つけ、それぞれ詳しい大人の話に聞き入っていました。
自然体験が子どもの精神的発達に与える影響
自尊感情や自己肯定感の向上
- 自然体験が豊富な子どもほど、自尊感情が高くなる傾向にあります[3]。
- 自然の中で様々な体験をすることで、自分への肯定的な感情が育まれます[3]。
外向性や積極性の涵養
- キャンプや登山などの自然体験が多いほど、外向的で活発な性格になりやすい
ことが分かっています[3]。
- 自然の中で新しい挑戦をすることで、チャレンジ精神が養われます[4]。
向学心や学習意欲の向上
- 社会体験や文化体験とともに、自然体験も子どもの向学的な意識を高める効果
があります[3]。
- 自然の中で好奇心が刺激され、学ぶ意欲が湧きやすくなります。
精神的回復力や情動調整能力の獲得
- 自然体験が豊富な子どもは、新しいものを追求する性質や感情調整力、肯定的
な未来志向が高まります[3]。
- ストレス解消や情動のコントロール力が身に付きます。
Natural Resource Damage Assessmentの重要性
自然資源損害調査(NRDA)は海洋油濁事故の際に生態系保全のための回復費用を補償する重要なプロセスであり、海鳥は多くの事例で指標として利用されています。海鳥被害を正確に評価する為には、事故が発生していない状態での漂着数が基礎となります(ベースライン・データー)。今回の調査データは、中部太平洋海岸のベースラインデーターとして記録されます。このような調査が、多くの地域で行われる必要があります。
(漂着鳥調査: Dead Birds Count from 2022年日本鳥学会発表ポスターより)
まとめ
生まれ育った故郷の海岸を楽しみながら長年調査しつつづけている「あかばね塾」の取り組みに都市の小学生と参加し、貴重なデータを収集するお手伝いが出来ました。次の世代に豊かな地球環境を伝えていくのは大人達の責任です。今後も地域社会と連携し、海洋生態系保全活動に取り組みたいと思います。
日本では、環境保護団体のスタッフが被害調査を行う際の費用を支出するシステムがありません。そのため、NRDAアジアは現地での支援活動を続けるために外部からの資金援助が必要です。もし可能であれば、私たちの活動へのご支援をお願いします。皆様のご寄付が私たちの取り組みを支えることになります。【寄付リンク】
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