渥美半島 漂着鳥調査報告 5/24/2025
- Kaz Uematsu
- 5月26日
- 読了時間: 4分
はじめに
愛知県の渥美半島では、古くから晩春から初夏にかけてミズナギドリ類の漂着が知られています。特に、南オーストラリアで繁殖し北上するハシボソミズナギドリが多く漂着することが確認されています。この漂着現象を長期にわたり調査することは、南氷洋の生物資源推移を評価する上で非常に重要です。
また油流出事故などの環境災害に備え、自然資源の被害を評価する (Natural Resource Damage Assessment: NRDA)ためのベースラインデータを収集するトレーニングとしても貴重な活動です。
東三河野鳥同好会を中心に、渥美半島の太平洋沿岸では2009年から継続的に漂着鳥調査が実施されており、2020年には東三河野鳥同好会の藤岡エリ子氏と藤岡純治氏がその調査結果を報告しています。
https://www.toyohaku.gr.jp/sizensi/06shuppan/kenkyuuho/kenpou33/33kenkyuu-houkoku_p53.pdf
この活動は、地域の子供たちや一般市民が自然環境に関心を持ち、調査を学ぶ環境教育プログラムとしても行われています。

2025年調査概要
来る2025年5月24日(土)、東三河野鳥同好会の主催により、渥美半島太平洋ロングビーチにて漂着鳥調査が実施されました。今回の調査には、東三河野鳥同好会のメンバーに加え、NRDAアジアの植松と高校一年生のS.I.さんが参加しました。S.I.さんにとって、環境資源の損害評価における漂着鳥調査の重要性を学ぶ貴重な機会となりました。

調査方法
調査は、静岡県田原市太平洋ロングビーチ駐車場からあかばねロコパーク駐車場にかけての約4kmの太平洋側沿岸で行われました。参加者は?人で海岸線を踏査し、確認された全ての漂着鳥の種類と数を記録しました。漂着鳥が斃死体である場合、その状態を「新鮮」「やや古い」「腐敗」「白骨・乾燥」の4段階に区分しました。位置情報はGPSを用いて記録されました。また、漂着鳥以外の漂着物についても観察・記録が行われました。
調査結果
今回の2025年5月24日の調査では、以下の漂着物およびストランディング個体が確認されました。確認された鳥類は全て斃死体でした。
ハシボソミズナギドリ: ?羽
カワウ: 2羽
ウミウ: 1羽
スナメリ: 3頭(ストランディング)
漂着鳥全体に占めるハシボソミズナギドリの割合は過去の調査でも非常に高いことが知られています。

考察と参加者の声
過去の調査では、2010年(2008個体)、2013年(2443個体)、2016年(2010個体)といったハシボソミズナギドリの大量漂着が確認されています。しかし、2020年から2022年にかけての調査では、それぞれ131個体、59個体、140個体と、大量漂着は発生していません。
今回の1回の調査で確認されたハシボソミズナギドリ10羽という数は、これらの大量漂着年にはつぐ結果でした。長年この調査を担当されている東三河野鳥同好会の渡辺幸久さんにおると、今年のハシボソミズナギドリの特徴として小型化と削痩を指摘しています。特に、これまでで最短の嘴長とのことです。

近年大量漂着が見られない理由としては、雛期に十分な餌が与えられたことによる生育の良さや、黒潮の大蛇行による鳥の飛翔ルートや斃死体の漂着状況の変化などが可能性として考えられています。今年は生育期の餌量が少なかったのかも知れません。

東海テレビ2025/05/13 22:05配信
今回の調査には、NRDAアジア代表の植松と、高校一年生のS.I.さんが参加させていただきました。今回の経験が、S.I.さんにとって自然や環境問題についてさらに深く考えるきっかけとなったことでしょう。あらためて、主催者東三河野鳥同好会の皆様に感謝申し上げます。
まとめ
今回の渥美半島漂着鳥調査は、NRDAのベースラインデータとして重要な情報を収集するとともに、参加者に海洋環境への関心を高めてもらう貴重な機会となりました。特に若い世代がこうした活動に参加し、自然の現状を学ぶことは、次の世代に豊かな地球環境を伝えていくという大人達の責任を果たす上で非常に重要です。北半球の日本でのハシボソミズナギドリの漂着南氷洋のオキアミ生産量がリンクしている事を思うと、つくづく地球は一つの生態系であることに気づかされます。
NRDAアジアは今後も東三河野鳥同好会と連携し、渥美半島の沿岸における漂着鳥モニタリング調査を継続していく予定です。このような活動を通じて、地域社会と共に海洋生態系保全への取り組みを進めていきたいと考えています。
追記
東三河野鳥同好会は、漂着鳥調査を毎月(基本は第2土曜)実施しています。次回以降に体験参加をご希望の方は、 NRDAアジア植松までご連絡ください。
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