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  • 執筆者の写真Kaz Uematsu

八王子市で発見されたニホンカモシカのケーススタディー【続報】

更新日:5月11日

はじめに:緊急事態の発生と初動対応

 八王子市上川町の住民である疥癬症に罹患したニホンカモシカを見守っているTさんからの連絡で、Tさん宅に隣接する河川敷で、ニホンカモシカが死亡しているようだとの報告がありました。この報告を受け、私たち獣医師のチームはすぐに対応を開始しました。


ー東京都獣医師会への報告と東京都への連絡:  カモシカの状況を獣医師会事務局に報告し、獣医師会を通じて令和2年の文化庁通達に基づく「維持の処置」として獣医学的対応をする旨を東京都へ連絡をしてもらうよう獣医師会担当者に依頼しました。

ー日本獣医生命科学大学の病理学教室への連絡:

 最悪の場合に備えて遺体の受け入れ準備を依頼しました。

ー現地への急行:

 カモシカが横たわっている河川敷に急行し、状況を直接確認しました。


 駆虫薬の投与後にカモシカがやや回復傾向にあるとの情報がありましたが、残念ながらその後、カモシカの衰弱が徐々に進んでいたようです。現地に到着すると、カモシカは全く動けず、周囲にはハエが集まっていました。この状況を鑑み、私たちはカモシカをNRDAアジア東京自事務所を置いているアジアパシフィックベテリナリーサービスに一時的に搬送し、詳細な診断を行いました。


診断

 アジアパシフィックベテリナリーサービスに搬送されたニホンカモシカは、到着後の状態が極めて悪化していました。今までの経過と、起立不能、浅い腹式呼吸、意識消失などの臨床症状から、専門の収容施設のない状況でのこれ以上の治療は困難であると判断しました。動物福祉の原則に基づいて、苦痛からの解放のために安楽死を選択しました。



病理解剖

 遺体は速やかに日本獣医生命科学大学に搬入され、以下の目的で病理解剖が行われています。

ー人畜共通感染症の基礎データとして:東京都における最新症例の科学的記録を残します。

ー八王子地域における生物多様性の記録として:個体の年齢や性別などのデータを記録します。

ー獣医大学の学生の教育に貢献:実践的な教育の一環として、学生たちに解剖の経験を提供します。


 今回のケースのように、死亡した傷病野生動物の病理学的検査は、将来発生するかも知れないパンデミックの予測や防除に重要な情報を提供するワンヘルス上のデーターの宝庫です。



 

東京都には傷ついた野生動物を保護・治療・研究する充分なシステムがありません。そのため、NRDAアジアは今回のような活動を続けるため外部からの資金援助が必要です。もし可能であれば、私たちの活動へのご支援をお願いします。皆様の寄付が私たちの取り組みを支えることになります。【寄付リンク】

 

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